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■東日本大震災 津波被災地見聞録 其之九
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□福島県南相馬市(平成二十三年十一月十二日・十三日訪問)

 相馬市の南に連なる南相馬市は、相馬市と同じく福島県の太平洋岸に位置し、やはり津波による甚大な被害を受けた。
 しかし南相馬にあっては、津波そのものよりも、より大きな、かつ現在進行形の被害をもたらしているのものがある。

 そう、メルトダウンを起こした福島第一原子力発電所である。

国道6号線を南下して行くと、検問所が現れる。
この先が、福島第一原発より半径二十キロメートルの、避難指示区域である。

警官が立つ検問所。ここから先は一般車立入禁止。もちろん、歩行者であっても立入禁止である。近付くと、警官に立入禁止である旨を告げられた。


検問所の電光掲示板には「災対法(災害対策基本法)により立入禁止!」という文字が流れ続けている。

検問所で検問を受ける車。
関係者や警察、作業用の車両など、様々な車がこの検問所を通る。

検問所の脇にある釣り道具屋は閉鎖されている。ギリギリ避難指示区域内にあるというところだろうか。この店舗の主人は、自由に出入り出来るのか、あるいは他の避難指示区域の家屋や店舗同様、許可が下りたときにしか出入り出来ないのか、気になるところではある。

検問所付近の、のどかな風景。
どこにでもある田舎の風景だが、写真の左側は、避難指示区域である。

検問所の近くの、歩道の崩れた場所。
向かいのドライブインの看板も倒れたりしていたが、ここは海岸から二キロメートル程度とは言え、間に丘陵もあるので、津波ではなく地震の揺れによる被害だろう。


検問所の脇の小川には、海から遡上してきた鮭が、バシャバシャと跳ねていた。


検問所の警備は、もちろん夜も行われている。

検問所の少し手前にあるセブンイレブンは、一定時間ではあるが営業しており、検問所の警官も飲み物などを買いに来ていた。


 検問所から四キロメートル程度離れた、道の駅南相馬は通常通り営業している。
 レストランでは、近隣の浪江町発祥のB級グルメである、浪江焼きそば(太っちょ焼きそば)も食べられる。

道の駅の施設の一部は期日前投票所になっており、「福島未来」という、福島県の選挙管理委員会の萌えキャラポスターが貼ってあった。

検問所や道の駅からも近い、相馬野馬追祭場地。千年以上の歴史を持つ神事・祭礼である、相馬野馬追の主要な会場。
震災のあった平成二十三年は、変則的なスケジュールになりながらも行われた。ただ、相馬野馬追は、周囲の広い地域から行列を組んで集まって行うもので、避難指示地域に入っているために、参加出来ない地域もあったようだ。


 南相馬市北部の国道六号線沿いに建つ「香の蔵」。漬物専門の老舗で、位置ゲー「コロプラ」の提携店でもある。
 こちらも通常通り営業している。

「香の蔵」の名物の一つが、珍味「豆腐の味噌漬け」だが、震災後、いつもと同じ豆腐が入手できず、代用の豆腐を使っているため、崩れやすくなっているので、「代替豆腐の味噌漬け」と商品名を少し変えて販売している。
平成二十四年の一月頃には、元と同じ豆腐が手に入るようになるらしい。

「香の蔵」の敷地内にある「じぇらーと蔵」の竹墨ソフトクリーム。
竹墨は放射線の影響を軽減する効果がある、といった旨の説明書きが、ファンシーな中にも切実さをにじませていた。


 津波被災地見聞録は、以上である。今後また探訪する可能性はあるが、岩手、宮城、福島と、特に被害の酷い地域を一通り巡り、原発被害による立入禁止区域にたどり着いたところで、ひとまず終わりにしたい。

 「百聞は一見に如かず」をモットーとする筆者だが、実際に津波被災地で見聞きしてみて、今回以上に「百聞は一見に如かず」であったことは、これまでの生涯になかったと思う。

 何よりも、想像を絶するその被害の凄まじさに、圧倒され、打ちのめされる。写真や動画で知ってはいる光景であっても、己の目で見るのとでは全く印象が異なった。

 自然の猛威とはかくも凄まじきものか。人の営みなど、一瞬にして流し去ってしまう。
 また、人の作った建物など簡単に壊し、押し流してしまう津波の前でも、高さ二百メートルの断崖である北山崎などは、特に影響を受けることもなく、変わらずそびえ立っており、人と自然の比ぶべきもない強弱の差を思い知った。

 しかしそのような自然の猛威の中から、再び立ち上がろうとする人々の強さも、また心を打つものがあった。
 津波被災地は、少しずつ復興していっている。観光業を再開しているところもある。
 無類の旅行好きである筆者としては、今後もこれらの地域を旅行する事で、少しでも復興の一助となれればと思う。

 そして、原発。
 日本に巨大な立入禁止区域が出来てしまった現実。この問題は、今後どうなっていくのか……。
 今それを、一言で語る言葉は持ち合わせていない。


東日本大震災 津波被災地見聞録 完


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