1st.DAY 2004/12/29 東京→フランクフルト空港→アテネ(エレフテリオス・ヴェニゼロス空港)

 昨晩会社の忘年会でやや睡眠不足気味なのも意に介さず、出発。既に何度も海外旅行を繰り返し、今回はイスタンブールへ赴く大学時代の友人・ダメ小役人さんと午前9時に上野待ち合わせ。いきなり少々待ち合わせに遅れたが、何とか9時20分のスカイライナーに滑り込む。何だか早くも波乱含みの予感だ。
 10時半前、空港第2ビル着。今回ダメ小役人さんと待ち合わせたのは、便と航空会社は違えども、似たような時間に似たような方向へ同じ第2ターミナルからフライトするからだ。チェックインを済ませ、換金、買い物を少々し、今年最後の日本の食事のとんかつを食べる。12時頃ボディチェック・出国検査も済ませ、搭乗ゲートへと向かった。私は日本航空13:30発フランクフルト行きの便、ダメ小役人さんはルフトハンザ航空13:00発ミュンヘン行きの便。ゲートはかなり近くである。ダメ小役人さんはミュンヘンでイスタンブール行きに乗り換える予定だったそうだが、欠航となったためミュンヘンから一度フランクフルトに飛んでイスタンブールを目指すとのこと。そんなダメ小役人さんを見送り、いよいよフライト!

 飛行機自体はこの一年程で何回か乗っていて慣れたものだが、当然ながら国際線は初めて。やはり機内の設備がいろいろと異なる。シートの後ろにはモニターが付いていて、映画を見たりゲームが出来るようになっている。話ではいろいろ聞いてはいたが実際大したものだ。しかし私はそれよりも飛行機の現在座標と窓外の景色が気になった。何しろ初海外である。わざわざトイレに行きにくいのも覚悟で自ら窓側席を希望しているのだ。機は成田を発して本州をあっという間に縦断し、新潟付近から日本海を北上する。そして……おっ、見えた、眼下にユーラシア大陸が!!ロシア沿海州上空を通過、ついに外国に入ったのである。

飛行機から撮影した極東ロシア・沿海州。ウラジオストクよりは大分北を通過している。

 機はこのままロシア領内・シベリア上空を進み、ヨーロッパを目指す。搭乗時間は10時間を越える。そうなると、いかにモニターが付いていようが所詮エコノミークラスなんざ詰め込み式のタコ部屋同然。エコノミークラス症候群などという症例が出るのも頷ける。タバコを吸う場所もないので喫煙者にはなお苦しい。初の海外フライトで喫煙者でもある私にとってはいきなり音をあげるところではあるが、夜行列車2回乗り継ぎ鈍行のみで東京から網走まで40時間ほど列車に乗り続けたことのある私にとってはそれほど苦痛でもなかった。やがて機内食が出される。日本の航空会社なので機内食は米を中心とした和食。これが今年最後の和食となる。洋食にするかどうか聞かれている人も居た。
 窓外はひたすら一面真っ白な厳冬のシベリアの大地が続くが、やがて夜になり真っ暗になる。適当にウトウトしたり本を読んだりしていると、いつの間にか夜明けが。しかし、日は進行方向である西にある。つまりこれは……日没か? 一旦夜になったものの、地球の自転と反対方向に飛んでいるので沈んだ陽に追いついたのだ。その頃にはサクントペテルブルク近く。ロシアももう少しで終わりである。ロシア領内からバルト海に入ったあたりで2度目の機内食が出たが、内容は忘れてしまった。パンが主食だったような気がする。

 やがて機はバルト海からドイツに入り、夕暮れのフランクフルト空港に予定よりも若干早く午後5時到着。今まで色々な交通機関に乗ったが、遅延はあっても予定より早いというのは初めてだ。国際空路ではときどきはあることなのだろうか。
 さて、日本からギリシアへの直行便はないので、ここでアテネ行きに乗り換えなければならない。機を降りてしばらく行くと、日本航空の職員が乗り換え便の案内をしていた。フランクフルト乗り換えの客が多いためだろうか。到着便は第2ターミナルで、離陸便は第1ターミナルであるため、まずは「スカイライン」という空港内移動用シャトル意で第1ターミナルに移動せねばならない。一応案内している職員に聞くと、アテネ行きはゲートがまだ決まっていないのでとりあえず第1ターミナルに移動しておいてくれとのことだった。

フランクフルト空港内ターミナル間移動用の「スカイライン」。

 スカイラインに乗ると中の表示がドイツ語だらけで、ついに海外に来たんだな〜、と感慨もひとしお。実は私、大学ではドイツ文学専攻だった。だから簡単なドイツ語なら読み書きできないこともないでもない(ものすごく消極的)。ただの乗り換えとはいえ、はじめてやって来た外国がドイチュラントというのも何かの因縁だ。
 スカイラインはすぐに第1ターミナルに到着。そこで離陸便の一覧を見てみるが、なるほど、確かにアテネ行きのゲートは決まっていない。離陸は19時25分と2時間ぐらい後なのだが、それでもゲートが決まらなかったりするものらしい。行き先のギリシアはシェンゲン協定加盟国(EU加盟国間の検問廃止協定)なので、ここで入国審査を受けねばならないのだが、審査所はゲートによって分かれている。2時間ボーッとしているのも何なのでメシでも食ってみることにした。ふと見るとマクドナルドがあったが……ここでいきなりマクドナルドも何だか萎える。隣にはクリスマスらしい飾り付けをされたいい感じのカフェ&バーがあり、タバコも吸えるようなのでそちらに行ってみた。
 さて、いよいよ外国語を使わねばならない。先にも述べたように私は一応ドイツ語の読み書きが一応……できる。メニューにはドイツ語と英語が書いてあるが、せっかくなのでここはドイツ語で注文してみよう。ファーストフード形式の店なので、カウンターで注文する。
「トマテン ケーゼ トアスト ウント コカコーラ」
 黒人系の店員は眉にしわを寄せて「あぁん?」という顔をしている。うーん、やはり発音がまずいのかな。特に「トアスト」のあたりが。しかし根気よく3回ほど繰り返したら、ようやく通じた。要望通り、トマトチーズトーストとコーラが出てきた。コーラのペットボトルにはプラカップがかぶせてある。これで3.5ユーロくらい(このときのレートで500円ほど)。まあこんなもんだろう。

フランクフルト空港内のカフェ&バーで食べたトマトチーズトーストとコーラ。 コーラのボトルキャップもドイチュ仕様。写真では不鮮明だが、記述は全てドイツ語。

 トーストは別段うまいものでもなかったが、トマトは結構フレッシュだった。コーラは当然普通のコーラだが、瓶の表記はドイツ語である。う〜んドイチュラント。ハイル!ハイル!
 さてこんな風に変にテンションが高まってきても、まだまだゲートは決まらない。離陸まで1時間を切った頃、ようやくゲートが決まった。早速入国審査を受ける。すぐ終わるかと思いきや、結構時間がかかる。審査官はペラペラペラペラとパスポートのページを始めから終わり、終わりから始めへとめくり続けている。何をやっているんだろうかと思って眺めていたが、どうも出国スタンプが見当たらないようだ。指摘しようかと思った矢先、ようやく発見してくれる。あとは目的と滞在日数を聞かれ、入国審査は終了。空港から出ていないのでボディチェックはない。
 審査所とノーチェックの税関を抜けて、ゲートへ。ゲート前のカウンターで次のオリンピック航空のチェックインを済ませる。首からロープにつけて提げていたパスポートをロープとの接合部から切り離して渡すと、職員のおねいちゃんに「グッドアイディア!」とほめられた。ほか、預け荷物はあるか、席は窓側と通路側とどちらがいいか、などを英語で聞かれる。搭乗まではまだまだ時間もあったので空港内の免税店などをうろついてみた。

フランクフルト空港内部。クリスマス装飾が随所に見られる。

 午後7時も過ぎ、いよいよ搭乗時間。飛行機までのシャトルバスには、日本人どころか東洋人は全く見られない。冬のギリシアはオフシーズンなので、観光に来る人も少ないのだろう。さてそろそろ離陸の時間……となっても少しも離陸する気配がない。まあ少しくらい遅れるのはよくあることだ、と思いながら待っていたが、いつまで経っても搭乗用階段も移動していかない。ギリシアはのんびりしていて公共交通の遅延もしばしばとか聞いたが、いきなりこれか。しかしやがて機内の乗客もざわつきはじめる。うしろの乗客も携帯を使ってギリシア語で何やら話している。どうも常ならざる事態のようだ。そもそもここは天下の国際空港、そんな一国の習慣ぐらいでやたらと遅れたりするものでもないだろう。そのうちに離陸してもいないの落ち着けと言わんばかりに機内ドリンクサービスが始まる。こりゃあかんわ、当分動かんな、と思っていると、機内放送が。はっきりとは分からなかったが、フローズン、とかウォームアップ、とかいう言葉が聞こえてくる。おいおい、エンジンでも凍ったか? と思ったが、よく考えてみるとさっきから全く離着陸がない。となりのルフトハンザ機も全く動く気配がない。おそらく滑走路でも凍ってしまったんではないだろうか。
 午後9時頃を過ぎて、ようやく乗客に席に着けとの指示が出る。離着陸も始まったようだ。搭乗用階段も離れてゆく。約2時間の遅れでやっとテイクオフ。夜のフランクフルトを後にした。

 オリンピック航空はギリシアの航空会社。案内もギリシア語がメインで、一応英語の案内もあるという程度。座席も日本航空ほどは良くはなく、もちろんモニターなどもない。ただし、窓側の席は最大で2列である。国際線とはいえそれほどの長距離ではないからだろう。機体自体も小さめだと思われる。離陸して約1時間後、機内食が配られた。国際線というのは短いフライトでも食事が出るものなんだろうか。品目は、ペンネグラタンみたいなやつとサラダ、それにパンとフルーツケーキ。ペンネグラタンの方はあんまり味がないような感じで、これからの食事は先が思いやられるかな、などと思っていたが、サラダが美味い! トマトときゅうりとオリーブとチーズにオリーブオイルをかけただけの単純なものだが、これが美味いのである。これがいわゆるグリークサラダというやつだろう。全体としては日本航空のほうが美味かったが、このサラダに関してだけは段違いに美味い。これなら現地の食事も期待できそうだ。

オリンピック航空の機内食。ペンネグラタンの味はイマイチだが、グリークサラダは美味い!

 機内食の提供や、ドリンクのサービスもそうだが、スチュワーデス……もといフライトアテンダントには男性もいる、というよりむしろ男性の方が多い。このへんは日本より男女平等が浸透しているのだろうか。確かにスチュワーデスを男女平等の見地から名称変更するぐらいなら、実際に男性も雇用すべきだよなあ。日本の航空会社は女性ばかりだったけど、これがグローバルスタンダードってヤシですか。さすがはヨーロッパ。だからいい年したおっさんがコーヒーや紅茶片手にやって来ます。「チャイ、パラカロー」「ティー、プリーズ」と、ギリシア語と英語を繰り返しながら。ギリシア語でも茶のことを「チャイ」というようですな。このへんはアジアに近いからあんまり発音が変化してないのかも。そういえば日本の「茶」という言葉も語源は同じなのかもしれませんな。
 航行途中、気流の乱れで何度かベルト着用サインが出るが、乗客はあまり意に介さない様子。フライトアテンダントも意に介さずに飲み物配ってます(ヲイ)。4時間くらいして、眼下にギリシアの街並みが見えてきた。ギリシア時間で24時頃。約2時間遅れで出発したにも関わらず、到着は1時間遅れただけだった(ちなみにドイツと日本の時差は8時間、ギリシアは7時間)。日本を発ってより約18時間、ついに憧れのギリシアへやってきたのだ。

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