■東日本大震災 津波被災地見聞録 其之八
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□福島県相馬市(平成二十三年十一月十二日・十三日訪問)
福島県の太平洋側、いわゆる「浜通り」の最北に位置する相馬市。
ここには入り江が砂州によって海と仕切られ、海水と淡水の入り混じる風光明媚な汽水湖・松川浦がある。
その最奥にまで、津波は容赦なくやって来た。
狭い砂州の上にも車道があり、松川浦と太平洋を同時に見られる名所だったのだが、その道も通行止めになったまま。
津波は松川浦を越えて、湖岸から離れた平地にも大きな被害をもたらした。
上の写真のあたりは、広大な田か畑だったようだが、荒地になってしまっている。
道路沿いには、長い距離に渡って、ガードレールがなぎ倒されたまま、土に埋もれている。
ぐしゃぐしゃに折り曲げられたガードレールもあった。
津波でこうなったものか、あるいは撤去する際にこのようにしてまとめたものか。
松川浦の湖畔が近付いて来ると、岸からはそれなりに離れていて、本来どう見ても湖水などなかったであろう場所に、池が出来たり、路面が冠水してしまったりしていた。左の写真はコンビニのすぐ裏で、右の写真はそのコンビニの駐車場と前を走る道路。水をバシャバシャとはねながら車が走る。
地震による地盤沈下の影響か、あるいは、津波の際にもたらされた水が、引かないでそのまま残ってしまったのか。
松川浦で転覆したまま放置されている漁船。
湖岸沿いのこの道は、帰りに通った際には、潮が満ちてきて、路面が少し冠水してしまっていた。やはり地震によって地盤沈下してしまっているのだろう。
先に書いた、湖岸から少し離れた場所が水に浸かってしまっているのも、地盤沈下によってどこかから水が流れ込んでいるためかもしれない。
松川浦の北端、太平洋への開口部がある尾浜には、多数の旅館や民宿があるが、こちらも津波による被害でズタズタに。
尾浜の沿岸の冠水度合いは酷く、松川浦マリーナの潮干狩休憩所などは、津波による破壊は免れたものの、完全に湖の中になってしまった。
また、周囲の路地にも湖水が入り込んでしまい、地形が変わってしまった感がある。
松川浦の太平洋開口部に架かる、松川浦大橋は、津波に耐えて残った。
現在は通行止めだが、作業用の車両が橋上を通行したりしているので、いずれ一般車も通行可能になるものと思われる。
ただ、付近の沿岸の被害は殊に酷く、コンクリート製の構造物なども押し流されてしまっている。
松川浦大橋の北側、太平洋に面した岸壁。津波で防波堤が損壊、卸売市場も壊滅的な被害を受け、閉鎖している。
一方で、松川浦大橋の下あたりの、松川浦開口部は魚が集まるのか、釣り客がそれなりに多くいた。また、尾浜の旅館には営業を再開しているものも多かった。
元々釣り人には人気の場所なのか、津波被害を受けて後も、一定の需要に支えられてはいるようである。
海水と淡水の混じる汽水湖は、特殊な環境で、釣りをする上では独特な面白さがあるのかもしれない。
しかも、汽水湖は国内でも浜名湖や宍道湖、サロマ湖など、数えるほどしかないので、広い地域の釣り人を集めるものと思われる。
この状況下でも多少とも観光収入が見込める、貴重な資源かもしれない。
なお、相馬市南部にある道の駅では、松川浦で採れたのりの佃煮を売っていた。
松川浦はのりの養殖で有名な場所だったが、津波により壊滅的な被害を受け、収穫不能に。
売られているものは、震災前までに採れたものだそうだ。
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