6th.DAY-2nd. 2005/1/3 アテネ→ミラノ

 アテネからミラノまでは約2時間のフライト。アドリア海を挟んだ隣国なので、あっという間だ。

アリタリア航空の機内食。短いフライトなので、スナック程度のものである。 アリタリア機の機内。イタリアのナショナルカラーである緑に統一されている。

 風景などを見て、ボンヤリしているうちに、機はミラノ・マルペンサ空港に着陸。

アリタリア機。やはりナショナルカラーに塗られている。

 マルペンサ空港では、入国審査はおろかパスポートのチェックも何もなかった。ここではシェンゲン協定加盟国からの入国に関しては、国内線と全く同じ扱いである。
 マルペンサ空港はイタリア最大の空港で、南欧でも屈指のハブ空港であり、あくまで日本行きの乗り継ぎの為に寄ったのだが、実はトランジットが6時間もある。ここでただ空港内にいる手はないだろう。ちょっとだけでもイタリアの雰囲気を味わってみたい。元よりミラノ市内を見物するつもりである。

マルペンサ空港内部。空港内部もアリタリア機同様、ナショナルカラーの緑を基調としている。空港内にもオシャレさがにじみ出ているのはさすがだ。

 マルペンサ空港からミラノ市街までは結構な距離がある。ミラノ市街までの主な交通手段は列車かバス。もちろん鉄道好きの自分は列車を選んだ。
 空港内に専用カウンターがあったので、ここでミラノ行きの列車「マルペンサ・エクスプレス」のチケットを買うことにした。市街まで9ユーロ。往復で12ユーロだ。20ユーロ紙幣を出して買おうとしたらお釣りがないとのこと。しかも英語の通じ方が微妙な感じ。仕方ないのでクレジットカードで購入した。
 チケットを手に入れ、マルペンサ・エクスプレスのホームに向かう。列車の車体は赤・白・緑の完全なナショナルカラー。イタリア人は余程自国の国旗の色に愛着があるのだろうか。

マルペンサ・エクスプレス。ミラノともなるとアテネと違い車両の編成も長い。また2階建てでもあるので、収容人数もかなりのものだろう。

 2階建て列車の2階に乗り込むと、やがてやけに艶のある男性の太い声でアナウンスが流れる。録音した声を再生しているだけだが、それで男性の声というのは初めて聞いた。やがて列車が走り出す。車窓は田園地帯といった感じで、アテネ近郊とはかなり違った趣き。時々見え隠れする建物がいかにも西欧といった感じ。そんな感じでボーッと車窓を見ていると、雪を被った峻険な山脈が。こ、これが本物のアルプス山脈か!

マルペンサ・エクスプレスの車内からアルプス山脈を望む。

 やがて列車は市街地に入り込み、空港から約40分程でノルド駅に到着。この駅の改札の係員が、なんと日本人の女性だった。これ幸いと、近くにコインロッカーがないか聞いてみる。コインロッカーはすぐ近くだった。実は少ない時間の中でミラノを観光するのにこの荷物がネックだったのだ。何しろ大理石と石膏で重いので。

 荷物も預けられたので、はりきって観光と行こう。駅から一歩外に出てみる。ああ、いかにも西欧という雰囲気。とりあえず売店でスプライトなんかを買ってみる。1.2ユーロ。ギリシアよりは少し物価が高いようだ。商品をもらうときに、
「グラツィエ」
 などと言ってみる。いやあ、イタリアで本当に「グラツィエ」(ありがとう)などと自分の口から言う日が来るとは想像しなかったなあ。

ノルド駅前からチラリと見えたスフォルツァ城の一部。1450年、ミラノ公フランチェスコ=スフォルツァがヴィスコンティ家の居城を改築して建てたもの。現在は内部が美術館となっている。

 この近くには、かのレオナルド=ダ=ヴィンチの名作、「最後の晩餐」が飾られている、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会 (世界遺産)もあるのだが、ここはガイドブックに予約制と書いてあったので諦めた。何しろ時間は限られている。見学スポットは絞りに絞り切らなくてはならない。そこでミラノのシンボル、ドゥオーモ(大聖堂)だけに焦点を絞ることにした。

 ドゥオーモへは、ノルド駅の地下にあるカドルナ駅からメトロポリターナ(地下鉄)に乗る。地下に降りたところで、トイレに入った。イタリアのトイレは、チップを置いていかなければならない所が多く、トイレ内に硬貨を乗せるための皿が置いてある。しかもここでは、管理しているおばちゃんがいて、イタリア語で金を置いていけよ、らしいことを言っている。私は大がしたかったが、小と大で料金が同じでいいか分からなかったので、おばちゃんに英語で聞いてみた。が、返ってくるのはイタリア語ばかり。英語はまるで通じない。しかも、今回はたった6時間のトランジットだったので、イタリア語などまるで勉強していない。ええいままよ、皿の前に貼ってある紙に額面通りの金額(たしか1ユーロに満たない金額だったと思う)を皿に載せて、大用のトイレに入った。特に何も言われることもなく用を足せたので、大と小で料金が違うということはないらしい。まあ、一応「チップ」だからなあ。

 メトロポリターナは75分間以内なら1ユーロ、ただし改札を出てしまったらそこで無効という変わった料金体系。カドルナからドゥオーモまでは3駅なので、もちろん1ユーロで問題なし。ここから地下鉄1号線に乗り、ドゥオーモ駅へ向かう。

ミラノのメトロポリターナ1号線。落書きを落とすことなくそのまま走っている。アテネの地下鉄に比べると歴史も古いようで、駅構内も車内も猥雑な感じ。スリなども多いというが、特にそういった様子はなかった(もっともスラれるような場所には何も入れていなかったが)。

 列車はすぐにドゥオーモ駅へ着いた。地上に上がり、いよいよドゥオーモ見学である。

ミラノのシンボル、ドゥオーモ。1386年に着工し、427年後の1813年、ナポレオンによって完成を見た。その後もいくつかの追加工事がされている。全長158m、幅93m、全高108.5mで、世界最大のゴシック建築である。ファザードは見ての通りここ何年も修復中で、覆いがかけられてしまっているのが残念。

 さて、実はこのドゥオーモ、屋上へ上がる事が可能なのだ。だが、夕方には閉まってしまうらしい。現在午後4時。まずは屋上へと急いだ。
 屋上へは、なんとエレベータで上がる。乗り場は、建物の裏側にある。乗る前に荷物チェックを受けなければならない。荷物の大部分はコインロッカーに預けて来たのですぐにパス。エレベータ乗り場には軽く行列が出来ていた。故郷の名古屋城を思い起こさせる。
 やがて順番が来て、エレベータで一気に上層部へ。だが、降りてすぐに屋上、という訳ではない。結構階段を登ったり横に移動したりしなければならない。途中で下から階段を上がって来た人にも出会った。実は階段を登って来ることも可能である。(エレベータは5ユーロ、階段では3.5ユーロかかる)。行き交う人々は概ね白人だが、時折日本人の20〜30代の女性も見かける。今回の旅行で最も多く日本人を見掛けた場所だった。
 上へ上へと登って行くと、ドゥオーモの外壁が見え隠れする。外壁といっても単に垂直という訳ではなく、複雑な彫刻が施された何重もの尖塔で構成されているので、異次元にでも迷い込んだ感じがする。いやむしろファイナル○ァンタジーに出てくる魔法と機械がミックスされた塔でも攻略している感じである。おっ……頭頂部が見えた!

屋上へ至る通路の途中から中央の最も高い尖塔を見上げたところ。最も高い尖塔の頂上には、1774年に作られた黄金のマリア像が立つ。

 建物の壮大かつ緻密な造りに、言葉が出ない。もう、目玉が飛び出そうである。呆気にとられつつも、とにかく屋上を目指した。

いずれもドゥオーモ屋上へ至る通路からの眺め。

 そしてついに屋上へ……!

屋上に出たところで一枚撮ってもらった。

屋上は想像以上の広さだったが、中央から左右に傾斜していて、まさしく「屋根の上」である。

屋上の先端近くから中央の尖塔を望む。

ドゥオーモ屋上からのパノラマ動画はこちら


ドゥオーモ屋上より北側、ミラノ市街の向こうにアルプス山脈を望む。

全ての尖塔の上に聖人像が立つ。


尖塔越しに南側を望む。尖塔は全部で135本もある。外部にある彫像は約2200体。

ドゥオーモはミラノの中心である「ドゥオーモ広場」に位置する。ドゥオーモ広場へはいくつかの道が通じており、中心街を形成している。

ドゥオーモ屋上より「ヴィットーリオ=エマヌエーレ二世のガッレリア」(写真中央下のアーチ状の門に続くアーケード)を見下ろす。

どこを取っても精緻な彫刻ばかりでため息が出る。

夕陽に輝く黄金のマリア像。

ドゥオーモ屋上から沈み行く夕陽を眺める。

 ドゥオーモ屋上の景観に酔い痴れるうちに、日も暮れてきた。そろそろ屋上も閉鎖される時間なので、降りることにする。

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