紅葉紀行
其之七、秋の鬼無里 ハ、十二神社、一夜山など 呉葉門へ戻る
鬼無里は鬼女紅葉伝説の他にも特異な伝説の残る場所である。その一つが、かつて鬼無里の谷は巨大な湖であったという湖沼伝説。妙にリアルな伝承地が残り、紅葉紀行其之三でも少し触れたが、その最たるものが鬼無里北東の山中に鎮座する十二(じゅうに)神社である。
また、鬼女紅葉伝説の伝承地と重複する伝承地の多い、遷都伝説も鬼無里の代表的な伝説だが、その伝説の要ともいえるのが鬼無里に聳える一夜山(いちやさん)である。
十二神社社殿。撮り忘れたが、ここの鳥居は「波よけの鳥居」とも呼ばれる両部鳥居で、海上に浮かぶ厳島神社と同じ形式である。
十二神社「船繋ぎの樹(ふなつなぎのき)」の解説碑。境内には、湖があった頃、船を繋いでおいた木の株の跡がある。また、神社の神紋が船であるなど、湖があったことをうかがわせるものが多い。旧鬼無里村の小川村との境、大洞峠(おうどうとうげ)にも同じような木があって、鬼無里が湖であった時代には十二神社と船で往来したという。また、十二神社と大洞峠の木の間に太い綱が張ってあり、それを伝って航行したという伝説もある。
船繋ぎの樹の伝承を受けて詠まれた漢詩の碑。ちなみにこの時は若干急いでいたせいもあり、結局肝心の樹は見つけられなかった。
十二神社のさらに北東、旧戸隠村との境にある大望峠(だいぼうとうげ)より、戸隠連山を望む。黄葉が美しい。
大望峠付近より一夜山を望む。天武天皇の遷都を妨害しようと、この地の鬼達が一夜のうちに山を運んできたという伝説が残る。周囲の山とは標高差がかなりあり、戸隠連山などとも距離があるため、独立峰の趣がある。なお、この写真は上の戸隠連山よりも前の時期に撮影しているため、木々が青々としている。
鬼無里の中心部にあるそば処「おに屋」。そば粉のみで一切つなぎを使用しない「十割そば」の店。この店では石臼でそばの実を挽いてそば粉を作っており、香り漂う絶品のぞばが味わえる。店名はおそらく鬼女紅葉や一夜山の鬼などにちなんでつけられたものあろう。
「おに屋」のそば。特に秋の新そばの時期は最高。店内は全面禁煙だが、そばの香りを損なわないための配慮と思われる。筆者も喫煙者(※平成二十一年十二月以降禁煙)だが、そんなことは問題にならないほど美味い。筆者も各地で美味いと言われるそばを食べたが、今のところここのそばは他の追随を許さないほど美味いと思う。それでいて値段も千円前後と手頃。
鬼無里には温泉もある。それが奥裾花温泉「鬼無里の湯」。宿泊は一泊二食付八千円程度と安価。日帰り入浴も出来る。詳細は「霊湯禊場」にて紹介予定。
隣村小川村の、鬼無里へと至る道の途中にある「アルプス展望広場」より眺める夕焼けの北アルプスと三日月(写真左)。
十二神社、一夜山への案内
十二神社は、鬼無里と戸隠宝光社を結ぶ県道三十六号信濃信州新線の道沿いにある。鬼無里の中心部からかなり登ってきた場所で、カーブの多い場所で嫌でも目に入るので分かりやすい。一夜山は、十二神社からその先の大望峠あたりからが一番よく見えるだろう。一夜山には登山路もあり、標高も一五六二メートルなので登山経験者ならばそれほど難なく登れるだろう。
「おに屋」は鬼無里の中心部、国道四〇六号線の道沿いにある。国道四〇六号線が直角に曲がる、信号のある鬼無里交差点の手前、ガソリンスタンドよりは先(長野市方向から行く場合)。店と少しだけ離れた場所に駐車場もある。駐車場は道のの向かい側で、店よりは少し長野寄りの場所にある。分からなければ店で聞こう。
奥裾花温泉「鬼無里の湯」もやはり国道四〇六号線沿いにあるが、長野市方向から行くと、鬼無里の最奥ということになる。内裏屋敷や奥裾花自然園へ向かう道との分岐点よりさらに一、二キロ奥である。国道四〇六号を走っていれば分からないということはあり得ないだろう。
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左の地図の大望峠より、県道を鬼無里側(西)へ車で五分程下った道路沿いに十二神社が鎮座する。また、大望峠のほぼ真西に、一夜山が聳える。 |
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右の地図の通り、鬼無里の北側に一夜山が聳える。 |
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そば処おに屋の場所は左の地図の通り。 |
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鬼無里の湯の場所は右の地図の通り。 |
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