紅葉紀行
其之九、別所温泉 ロ、北向観音(下) 呉葉門へ戻る
観音堂の中には、平維茂の紅葉退治を描いた絵馬がある。また、北向観音の境内はさほど広い訳ではないが、そのほかにも見所がいくつかある。
観音堂内に掲げられている鬼女紅葉退治絵馬。
この絵馬は、狩野派の流れを汲む木村春洞が描いたもので、安政六年(一八五九年)に奉納された。
鬼と武者との戦いが躍動感溢れるタッチで描かれている。
観音堂の向かって右、崖にへばりつくように建てられている温泉薬師瑠璃殿。「医王尊瑠璃殿」ともいう。創建年代は不明だが、現在の建物は、創建当初のものが焼けた文化六年(一八〇九年)に再建された。温泉の薬効と薬師如来の病苦から人々を救うというご利益が結びついた温泉薬師信仰に基づいている。瑠璃殿という名称は薬師如来の別名「瑠璃光如来」来ており、医王尊も薬師如来の別名である。なお、「瑠璃」は青色の貴石・ラピスラズリのことで、青いガラスや青色そのものをも意味する。
観音堂の向かって右脇にある桂の大木「愛染桂」。
愛染桂の案内板。樹齢千二百年の雄の桂の大木で、北向観音の霊木である。近くの愛染堂と結び付けられ「愛染桂」と呼ばれるようになり、縁結びの霊木として親しまれている。川口松太郎の映画「愛染かつら」はこの木にヒントを得たと言われている。なお案内板に「若い人達」と書かれているが、「愛染かつら」の公開は昭和十三年であることを付記しておきたい。この木を目当てに参拝しに来るのは言うまでもなく年配者が大半である。
こちらは上田市の案内板。樹高二十二メートル、周囲五.五メートル、枝張り十四メートルで、海抜六五〇メートルという高地にこうした桂の大木があるのは珍しい。また、大火の際に出現した千手観音がこの桂の樹上で避難民を救ったという、創建にまつわる伝説も残る。
愛染桂の全体像。かつては縁結びの木ということで盛んにおみくじが結ばれたりしたようだが、現在は根元の保護のため近くには立ち入れない。なお、この愛染桂は黄葉も美しい。
「愛染桂」の名前の由来となった愛染堂。愛染桂とは参道を挟んだ向かいに建つ。愛染明王を祀ったものであろう。
愛染堂の右に建つ札所観音堂。この向かって右には、別所温泉を一望できるスペースもある。
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北向観音の場所は左の地図の通り。
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