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土蜘蛛紀行 豊後編
其之壱、五馬─ニ、天ヶ瀬温泉
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狭山田女:五馬から山を降って来たよ。谷間に大きな川が流れてて、なかなかいい景色だね。川沿いに旅館も建ってる。
大山田女:五馬市の北約二キロ、別府・由布院と共に豊後大分三大温泉と言われる、天ヶ瀬(あまがせ)温泉です。
狭山田女:温泉かあ。ところでここは五馬媛さんとどういう関係があるの?

大山田女:風土記の五馬山の記事には、五馬媛さんによる地名由来が書かれた後、天武天皇の時代、風土記が書かれる少し前の時代ですね、この頃、大地震が起きて山が崩れ、あちこちに温泉が湧いたという記載があります。
狭山田女:う~ん、凄まじいね。それがこの天ヶ瀬温泉なんだ。
大山田女:温泉というのは、地殻変動で噴出場所が変わったりしますので、ぴったりこの場所かどうかは分かりませんが、五馬から非常に近い、古くから有名な温泉ですし、少々違ったとしても、同じ温泉脈である事に間違いないでしょう。山が崩れて温泉が湧いたというなら、この谷底という立地はふさわしいですしね。
狭山田女:なるほど。地震は恐ろしいけど、大地の恵み豊かな場所なんだね。
大山田女:そうですね。ちなみに、日本書紀にも、天武七年に九州で大地震があり、大地が裂け、家が崩れたと書かれていて、これは現代でも実際の出来事だと見られています。風土記の描写も細かく、湯は火傷しそうな程熱くて、ご飯を炊くのに使えば早く炊けると書かれています。ある一ヶ所の湯は井戸のようで、深さはよく分からず、水の色は濃い藍色で、日頃は湯が流れないけれども、人の声を聞くと、驚き怒って突然泥を高く噴き上げるので、「いかり湯」と呼ばれるとも。これは間欠泉の事でしょう。同じ豊後国風土記の、別府の記事に、同じような間欠泉の記載があります。別府には今も「竜巻地獄」という有名な間欠泉がありますが、今の天ヶ瀬にはないようです。が、風土記の時代には間欠泉があったのでしょう。
狭山田女:確かにもの凄く細かい描写だね、間欠泉で「いかり湯」か。確かに神様が怒っているように思えるだろうなあ。
大山田女:ええ。先程大地の恵みと言いましたが、神様の怖さと優しさは表裏一体のものですからね。風土記の地震による温泉出現は、天武天皇の時代と書いてありますけども、それ以前から、この当たりには温泉が湧いていて、土地の人は知っていたかもしれません。そうした事から、五馬媛さんを、大地の女神とする解釈もあるようです。
狭山田女:なるほど。五馬媛さんは実在の人物らしい証拠があるけど、ご先祖様と神様は同じだし、巫女さんだったら大地の神様にも仕えるからね。大地震の起こるような場所なら、尚更大地の神様に祈る事は重要だったかもしれないし。
大山田女:はい。ここは阿蘇山もそう遠くない場所ですしね。古くから何度も地震はあったと思います。その怒りを鎮めつつ、温泉のような「恵み」を利用する事もしてきたことでしょう。風土記の記事でも、温泉の神威に怖れつつ、「米を炊く」という利用の仕方まで書いてある訳ですから。
狭山田女:うん、火を使わないでもご飯が炊けるんだったら、そんな恵まれた事はないもんね。
大山田女:私達の生きた古代の世界というのは、現代人には想像もつかないほど厳しいものですからね。毎日炊飯の為に火を起こすにしても、日々生きるための糧を得ながら、燃料を確保するのは、大変な事です。それが自然に湧く湯に浸せば済むのだったら、素晴らしい恩恵となるでしょう。大地の恵みを実感せずにはおられないと思います。

狭山田女:そうだね。確かに、五馬媛さんと無関係じゃあないかも。
大山田女:何と言っても同じ場所の事として続けて書いてある訳ですし。
狭山田女:よっし、じゃあ、あたし達も早速大地の恵みにあずかろう。見て見て、あんなところに河原の露天風呂があるよ。あそこに入ろうよ。

狭山田女:ああ~、いい湯だあ。湯の花もいっぱい浮かんでるよ。
大山田女:硫黄の成分が濃いそうです。昔は河原を掘ればどこでも温泉が出たとか。風土記の内容を彷彿とさせますね。
狭山田女:う~ん、五馬っていいところだねえ。


大山田女:本当ですね。現在では、天ヶ瀬温泉は五馬という地域には含まれないようですが、風土記の時代には同じ場所という認識だった訳ですし。ちなみに風土記にある「五馬山」というのは、具体的にどの山かは分からないようです。


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狭山田女:ふ~ん、まあ、この谷から五馬の方を見れば山な訳だし、このあたりの高原地帯の事だったのかな。天ヶ瀬はさしずめ五馬山の麓ってとこか。
大山田女:そういう事かもしれませんね。天ヶ瀬温泉への行き方は、左の地図を参照して下さい。



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